失踪日記 吾妻ひでお

一時期吾妻さんの本を買いあさっていたことがあります。
少年チャンピオンの「ふたりと5人」は小学生の時リアルタイムで読んでいたのですが、あまり興味を覚えませんでした。高校から大学生の時、SF熱と、第1次ロリコンブーム(勝手に命名)が重なって読み出すようになりました。
不条理日記」や「やけくそ天使」などなど買い揃え、暗い目と白マスクのキャラ"ブキミ"が主人公の『とつぜんDr.』(と『ちゃんどら』いしかわじゅん)を読むためだけに「ビッグコミック スピリッツ」を買い、イラスト集を買い……。今本棚見たら当時買った単行本は全部残ってました。

ななこSOS』単行本収録の最終回の絵の荒れッぷりをみてどうしたのかと思ったら、いつの頃からか雑誌で名前を見ることが無くなりました。失踪して肉体労働をやっているという噂を聞いたことがありました。
最近雑誌などでまた復帰したようだったので、陰ながら喜んでおりました。

で、Amazon.co.jp トップ100で現在3位(!)の『失踪日記』を買いました。
もうこれはすごい。
執筆に行き詰まり、自殺未遂、連載もやりかけでほっぽり出して失踪、ホームレスと化し、戻って(と言うか連れ戻されて)仕事復帰したと思ったらまた失踪、再びホームレス。
失踪中、とある会社に拾われガス配管工の職についていたが、辞めてまた漫画復帰。復帰したら今度は連続飲酒からアル中になり強制入院。
地獄ですね。本人も家族も。

この作品は、そうとう悲惨な内容にもかかわらず、昔ながらのあの丸っこい可愛い画風で描かれて一見、暗さのみじんも感じさせません(じっさいシャレにならないほどの悲惨な部分は描かれていないとのことですが、それでもかなり悲惨)。悲惨な自分やその置かれた状況、回りのおかしく怪しげな人々を、近づき過ぎない距離からクールに見つめ、ギャグにしています。

もうこれはギャグ漫画家の、いえ吾妻ひでおという人の「業」ではないかと思うのです。常に新たなものを生み出そうとして自己との消耗戦となり追い詰められて自滅するところまでいってしまう。でも、そんな自分を客観的に観察し、まんがにしてしまう。マーケッティング本位の現在の漫画界の中で自分を貫き通す、数少ない漫画家のうちのひとりであると思います。

Googleで調べると公式サイトも2月にオープンされていました。本当に復帰おめでとうございました。
今度はいなくなんないでね。

失踪日記

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