星になったおりえちゃん

「わたしはとべるよ」
そう言うとおりえちゃんは、両手をまっすぐ横にのばして、びわ湖のまんなかにそびえたったやぐらのふちに立ちました。
はるか下の水面からあたまだけだしたハザコちゃんが、やめろやめろとさけんでいますが遠すぎておりえちゃんには聞こえません。
おりえちゃんは両手をまっすぐ横にのばしたまま、鼻から息をスゥッとすいこんで、たかいたかいやぐらの上から一歩足をふみだしました。
ハザコちゃんはそうでなくても小さい目をぎゅっとつむってしまいました。


するとどうでしょう。おりえちゃんはそのままちゅうに一歩二歩とふみだしたかと思うと、すぃとそらにむけてとびはじめたではありませんか。
お月さまに照らされたおりえちゃんはまるでしらさぎのようにおそらをとんでいます。


「すごいっ、すごいやおりえちゃん」
ハザコちゃんはそらをとぶおりえちゃんをはっきり見ようと、湖面にげきとつしたときにゆがんではずれてしまっためがねをかけなおそうとしています。


おりえちゃんはしばらくびわ湖の上をなんかいかせんかいしておりましたが、ふいにあたまを上にむけ、夜ぞらに向ってぐんぐんじょうしょうしていきます。


「あれ?おりえちゃんどこへいくの?」
ハザコちゃんはおりえちゃんにむかってさけびましたが、もうちじょうの声などおりえちゃんには聞こえません。
びわ湖をかこむ山々よりもたかくおりえちゃんはまいあがっていきます。


「どこにいくんだよう」
もうハザコちゃんはなきごえになっていましたが、どんどんちいさくなってゆくおりえちゃんをどうすることもできずに見送るしかありませんでした。
おりえちゃんは、とかいのビルよりも、ひこうきのとんでいるところよりもはるか上をよぞらにむけてとんでいきます。


そうしておりえちゃんのすがたがこめつぶほどにしかみえなくなったとき、おりえちゃんはキラリとちいさくかがやいたかとおもうと、よぞらいちめんにかがやくおほしさまのひとつになりました。


おりえちゃんだったおほしさまは、しずかになにもいわず、ぎんいろの光をちらちらとちじょうになげかけています。びわ湖はそのひかりをはんしゃしてキラキラとよぞらにむけておへんじしています。


「もうかえってこないのかなぁ」
ハザコちゃんは岸にあがることもわすれて、おりえちゃんだったおほしさまをいつまでもいつまでもみあげておりました。


おわり


2005/1/9のコメントを受けてかきまちた。苦情は受け付けません。